日韓を離間 北の冠のひも戦術

日韓を離間 北の冠のひも戦術
 北朝鮮は昨年からの韓国や米国への対話攻勢以来、連日のように日本の安倍晋三政権を狙い撃ちした非難をメディアで繰り返している。韓国最高裁が昨年10月にいわゆる徴用工訴訟で日本企業に賠償を命じる判決を確定させてからは、日本に賠償に応じるよう圧迫し、韓国を援護射撃している。日韓対立に便乗するような態度だが、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の祖父、金日成(イルソン)主席時代からの「日米韓離間策」を忠実に実践しているといえそうだ。(ソウル 桜井紀雄)

■「拉致主張は徴用工逃れ」

 「恥を感じるべきだ」。北朝鮮国営の朝鮮中央通信は1月26日、徴用工判決をめぐってこう題し「罪を犯したなら謝罪し、代価を支払うのは初歩的な道徳だ」と主張する論評を掲げた。

 「ところが、安倍一味と戦犯企業は過去の罪悪への反省など毛の先ほども持たず、泥棒の居直りの格好で『最終的かつ完全に解決された』だの、『国際司法裁判所への提訴といった強力な対応』だのとわめいている」と指摘。「卑劣な島国の俗物の破廉恥な妄動だ」と批判した。謝罪や賠償を避けようとすれば、国際社会の非難が高潮し、「『戦犯国』という恥ずべきレッテルが一層浮き彫りにされるだろう」と警告した。

 国営ラジオが1月に放送した記者の対談番組では、麻生太郎副総理兼財務相の曾祖父が九州で創業した炭鉱会社を持ち出し、「朝鮮人を徴用などの方法で強制連行・拉致し、危険な坑内で酷使した」と主張した。

 安倍首相が年頭に拉致問題解決に全力を尽くすと表明したことに対しては、朝鮮中央通信が論評で「安倍がわめく『拉致問題』なるものは既に久しい前に解決された」と抗弁した。

 徴用工問題などを念頭に「過去、日帝(日本帝国)がはたらいた朝鮮人拉致・強制連行蛮行は日本の最も代表的な拉致犯罪だ」と強調し、「安倍の妄言は『拉致問題』を口実として過去の犯罪を覆い隠し、その清算を回避しようとする破廉恥かつ卑劣な術策の表れ以外の何ものでもない」と非難した。

■「1本切れれば韓国は崩れる」

 日本と北朝鮮は、2002年に当時の小泉純一郎首相と金正日(ジョンイル)総書記が署名した日朝平壌宣言で、日本の朝鮮半島統治に絡む両国と両国民の「財産および請求権を相互に放棄する基本原則」を確認し、国交正常化交渉で経済協力策を話し合うことで一致した。

 日本と韓国が1965年に結んだ請求権協定にならった形だ。だが、韓国最高裁が元徴用工らの請求権を認め、日本企業に賠償を命じた結果、協定の根幹が揺らいだ。北朝鮮がその機に乗じ、将来の日本との交渉で「もっとカネをとれる」と踏んで揺さぶりをかけたとしても不思議ではない。

 ただ、思惑はそれだけにとどまらないようだ。金日成氏は72年に大学の卒業式の演説で、韓国と日米の関係を冠とそれを頭に固定するひもに例え、「南朝鮮(韓国)政権は米国、日本という2本のひものうち、一本だけでも切れると、冠が飛ばされるように崩れてしまう」と説いたとされる。この「冠のひも」戦術で日本か米国と韓国を離反させられたときを「赤化統一」の好機とみたのだ。

 3代目の金正恩氏にとって徴用工判決に続く、韓国海軍の駆逐艦による海上自衛隊哨戒機へのレーダー照射問題をめぐる日韓対立は、棚からぼた餅式のチャンスといえ、黙って見過ごすわけはないだろう。

■旭日旗でも南北共闘

 韓国・済州島(チェジュド)での昨年10月の国際監艦式で、韓国側が海自に旭日旗の掲揚自粛を求め、海自が艦艇派遣を見送った問題でも、北朝鮮の国営ラジオは1月、記者の対談で安倍政権を糾弾した。

 「安倍一味は憲法改正を強行し、日本を戦争のできる国にして自衛隊に海外侵略の翼を付けようとしている」と牽制(けんせい)し、自衛隊が旭日旗をはためかせて「朝鮮半島などを侵略する道に突入するのは時間の問題だ」とあおり立てた。旭日旗と「戦争のできる国」を結び付けるという韓国で横行するステレオタイプの批判に同調し、「わが民族の対日敵愾(てきがい)心を増大させるだけだ」と南北共闘の姿勢を誇示した。

 トランプ米政権と非核化協議を維持する中でも、金正恩政権は、米韓離間策を怠っていない。対韓国向け宣伝サイトなどで「誰かの顔色をうかがうな」と、米韓合同軍事演習の完全中止や南北経済協力事業の再開を韓国に繰り返し要求。「外部勢力はわが民族がうまくいくのを願っておらず、対立を激化させて漁夫の利を得ようと画策している」と米国などとの引き離しにかかった。

 トランプ政権が在韓米軍の駐留費の負担引き上げを韓国に求め、協議が難航している問題でも、党機関紙、労働新聞は論説で「南朝鮮を友邦ではなく、欲を満たすための対象とみなす米国の下心をはっきりと示している」と批判した。

 韓国内でも文在寅(ムン・ジェイン)大統領が北朝鮮との融和に前のめりになる裏で、レーダー照射問題などで日韓対立が深まることを懸念する声がある。

 韓国紙、朝鮮日報の電子版によると、インターネット上には「日本の哨戒機が艦艇に接近飛行するのが韓国の安全保障に脅威を与えることだろうか」と疑問視する意見が書き込まれた。「韓国の頭上に浮かぶ北朝鮮の核という脅威は、文政権の記憶の中から消えてしまった。これでいいのか」

 金正恩氏の非核化意志を弁護し続ける文氏には、少なくとも北朝鮮による日韓離間策で政権が崩れるという危機意識はないはずだ。

[紹介元] Yahoo!ニュース・トピックス – 主要 日韓を離間 北の冠のひも戦術

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